踊る目覚め




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『なるみ君の新しい本を、あの元作家さんに送りました。そうしたら、本を開いてくれて、一度だけだけど、
笑ってくれたそうです。時々ペンも手にするようで、もしかしたら復帰してくれるかもしれません』
 

やえかは、白木さんからの手紙をたたむと、パソコンに向かって仕事の続きをはじめた。
 
あの後、資格を無事取得し、なるみのような人を支えたいと思うようになったやえかは、
なるみの友達が勤める会社の財務を担当している。
社員は、礼儀正しく、誠実で、働きやすかった。
 
同じ仕事でも、××会社のあの人のような人ばかりではない。
あの人もその会社ではあまり歓迎されない仕事の仕方だったそうだ。
 
(公平な判断力を身に着けて、誠実な伝え方ができる人になろう)
 やえかはこの会社に入るとき、そう決心した。
今不満があることは、自分から作り変えていけばいいんだ。
それは容易なことではないかもしれないが、同じように思っている人はきっといるし、
なるみ君のような人を想えば、できることはしていきたい。
 
「これ、やえかさんが作ったの」
白木さんにお昼に会った。やえかは、きれいな模様のグリーティングカードを作る趣味をもつようになった。
「いいね、今度お祝いがあるから、これ使わせてくれないかな」
「いいよ」
やえかは、お金にはならないけれど、カード作りは楽しい。(少しはなるみ君の気持ちがわかったかな)
と、心の中で楽しくなった。そんなやえかを見ていて
「やっぱりあのひとは、伝説の人だったんだね」
と、白木さんはきれいな瞳を前へと見据え、しみじみと言った。
「だけど、私は、ナタ・サティヤは、どこにもいるし、そんな立派な人じゃなく、誰でも会えるんじゃないかと
思う。あの人は自覚はないだろうけれど、やえかさんも私も、きっと誰かの伝説の人なんだと思う」

白木さんは、その後、仕事場へと戻っていった。笑顔で、やえかに手を振ると、まっすぐに歩いていった。
 
同じ勉強をして、別々の道を行く。
その人の決めた、これから歩いていく道を尊重する。
やえかは、彼女の背中を見送りながら、そんなことをぼんやりと思った。
 
 
「やえかさん、郵便が来ています」
「ありがとうございます」

やえかは、なるみの友達から、自分宛の郵便物を受け取った。
彼は、「俺にも届いたよ」と、笑顔でやえかの席を通り過ぎていった。
 
やえかは、郵便物を開いてみた。

ひとつは、仕事関係の確認書、もうひとつは、領収書、そして最後は、エアメイルの絵葉書だ。

やえかは、その葉書に最初に目を通した。
青空に浮かぶ雲と水平線のある海は、明るくあったかい雰囲気だった。
 
やえかは、くつろいだ笑顔をすると、机のかげで葉書を読んだ。
 
 
 
 
つづく