踊る目覚め





6


やえかは、夕食をつくるために、メモ用紙を見ながら、スーパーで食材を見て回っている。

「よっ」
「あ、この間は、本、どうもありがとう。少しずつ読んでるよ。お仕事の帰り?」
「うん」
なるみは、子供の雑貨の専門店でアルバイトをしている。

「これで、たんぱく質と炭水化物、ビタミン類と食物繊維はそろったから、あとはカルシウムね。」
「いつもそういう買い方してるの?」
白木さんは驚いて、やえかの買い物かごを見た。勉強の後、一緒にスーパーへ寄ったのだ。
「うん、好みは2の次。素材と栄養で買っているの」
「うーん、すごい」

なるみは、まるっきり好みで買っている。
「よし、今日はピーマンの気分だ」
と言って、ピーマンをカゴに入れる。
「明日の朝はきっとバナナが食べたくなる」
明日の自分の予報までして、気分とカンで買っていく。


スーパーのBGMは、静かなヒーリングミュージックが流れている。

なるみは、動きを止めしずかに耳を澄ましている。そのわずかの間、やえかは、なるみが少し繊細な人に見えた。

「ああいう音、どうやって出しているのかな。」やえかが言うと、

「うん?それはいいじゃん、良い感じなんだから、それで」

なるみの背中を見ながら、やえかは、その場で少し立ちどまってしまう。


(良いなと思うと、普通、そのことについていろいろ知りたいと思うものじゃないかな)
でもなるみは、ただ、良いものは良いと、それ以上関与せずに通り過ぎていく。






つづく