木香薔薇の庭





結婚式は、無事におひらきとなった。

レストランの、薔薇の庭での花嫁さんは美しかった。
しおりがオルガンを弾き、
さよもウエルカム・ボードやカードをセンス良く手作りした。

ほのかさんは、準備で一番大変だったにも関わらず、一番元気そうで、今日は三つ編みではなく
髪をアップにして、本格的なコックさんの服装で対応していた。

料理も大好評だった。メニューを考える段階で、さよが、「こういう盛り付けはどうでしょう。」と言ってみると
(バイトの意見なんて採用されないだろうと、たかをくくって)
ほのかさんは、お、いいねとあっさり採用するので、さよは「これは責任がある、大変だ」と思い、
盛り付けや結婚式の料理について、勉強するはめになった。

花嫁さんが喜ぶ一日にしたいと、家でも料理の練習をするようになった。
やっぱり主役には一番良い思いをしてもらいたい。
ほのかさんに教わった味付けで料理を食べていると、元気になる。

子供のころは、食べ物で人が元気になるなんて、そんな単純なことはないだろうと
思っていたが、大人になるにつれ、生活の中では、こういうことこそ、幸せや元気の理由になるとわかった。

「結婚式、とても素敵できてよかったわ。ほのかさんのレストランでは、お祝い事もなさるんですね」
ほのかさんと知り合いらしい人が来ていて、言う。
「うん、あと結婚記念日とか、誕生パーティーとか、イベント関係ね」

花婿の飯塚さんは、正装してもあまり態度の変わらない人で
「昼飯だけの仕事じゃ、採算合わねえもんな。」と言っている。


「いつもこのレストランの前を通るとき、こちらの薔薇が目に付きました。こういうところで式をあげられたらと
思っていたので、今日はとても嬉しいです。みなさん、祝福してくださってありがとうございます。」

さよは、帰り道、木香薔薇の庭を眺め、花嫁さんのその言葉を思い出していた。

さよも、最初に惹かれたのが、この庭だった。
そして、こういうところで働きたいと思っていた。
綺麗だから、それだけじゃない。ここにいると、今までの悩みなど、どれも解決できるものとなり、
穏やかな心地になっていくのがわかる。

さよは、やわらかい心と充実した疲れとともに、帰った。






つづく