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「伊藤くん、ほらこれ見てみなよ、かわいいな。」
太一は、いつもの学校の帰り道のところで先生とばったり会い、しゃがんでいる先生が
示すところを見てみた。
外側が青で、中心にいくにつれて白くなっている、小さすぎるような花が、
丸っこく点々と咲いていた。
「何という花ですか。」
「オオイヌノフグリ。春が近いとみかけるんだ。」
「そういえば、先生の家の側は花が多く咲いてますね。」
「うん、桔梗と勿忘草、夏はりんどうも咲くよ。」
「青紫の花が好きなんですか。」
「うん。」
それと同じくらい雑草も周りにあったが、何だか先生が植えて管理しているかのように、
きれいな配置ではえていた。
太一は、先生と一緒に横に歩きながら、あることを思いついて先生に聞いてみることにした。
「先生、人を正しく判断することについて、どう思いますか。」
「ん」先生は、あどけない目を太一に向けて、
「伊藤くんは、髪が伸びたな、とか?」
たしかに伸びてきたが、「そういう事じゃなく」と、太一は言い直した。
(それじゃ、見たまんまじゃないか・・・。)
「心です。心を正しく判断することは、大事だと思いませんか。」
先生は、太一の顔を見て何か察したようだった。
そして、少しうなってから、なんともかわいい笑顔でこう答えた。
「俺、そういうことは、あんまりかさにきて言えないんだ。」
先生は、正しいことを言うことに、慎重であるかのようだった。
「どういうことですか。」
「自分は、その人よりは、相手のことはわからない、という気持ちも、大切だと思うんだ。」
静かに雨が降ってきた。風もなく、水がとだえることなく流れていく音がする。
太一と先生は、それぞれ傘をさしてから、また歩き出した。
「人の判断って、その人の気持ちから影響を受けやすいんじゃないかと思う。
不満が強いと、人を悪く解釈しやすくなるんだ。」
太一は、伊藤がガラスを割ったと言った例の2人を思い出していた。
「正しいことを言っても、それを自分を守る道具にしたり、相手をやっつけようとする気持ちが
あると、それが先に伝わって、相手が聞いてくれなくなる。
・・・相手がもっとも望んでいるかたちで、正しく判断して、伝えられるのがベストかもしれない。
俺も、それは模索中なんだ。」
「先生が望むかたちの、正しい言葉って何ですか。」
「人が成長できる言葉です。」
先生は、即答した。
つづく