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太一は、校庭の一角を一目見て、緊張して立ちすくんだ。
(先生の花が・・・そんな・・・)
太一は、まるで自分の宝物が壊されたようにショックだった。
「先生、伊藤がやったんですよ。」
例の2人のうち、1人が太一を指差して言う。
その少し前に、2人は銀杏先生が植えた花のところへ行き、3分の1ほど花を抜いてしまった。
そこへ、担任の富田先生が通りかかり、怖い顔をして何か言おうとしたが、
思うところがあったのか、黙ってそのまま様子を見ていた。
「このくらいでいいかな。」
「うん、全部はさすがに植物も可哀相だし、それにこれ、結構疲れるな。」
そう2人が話しているのを聞いて、富田先生は少しだけ優しい目になって2人を見た。
「でも、銀杏先生、きっとがっかりするな。」
「うん・・・」
2人は、少しの間、落ち込んでしまった。その背中は意外と可愛くもあったが、しばらくして1人が、
「これもみんな、伊藤のせいだ。あいつがみんな悪い。よし、先生に報告にいこう。」
と、学校の職員室へ走っていった。
銀杏先生は、背中をこちらに向けて、花を植えなおしている。気持ちはわからない。
(自分でさえこんなにショックなのに、先生はどれだけだろう)
花は、根元ではなく、途中から切れて植え直せないものも多かったので、
先生はバケツに水をくんできて、そこに花を入れてあげた。
「伊藤くん、この2人が伊藤くんがこの花に手をかけたのを見たと言っているのですが、本当ですか。」
担任の富田先生も来ていて、公平で、心なしか優しい声で太一に問いかけた。
それに、太一から見て、何か知っているような目つきであった。
もしかして、先生は、俺ではないことを知っているのかもしれない。でも、自分の口から
違うと言ってほしいんだ、と、勘の良い太一は思った。
「伊藤は、さっきここに来てましたよ。それでこの花を」例の2人のうち1人が言いかけると、
「少し黙っていてください。先生は、伊藤くんに聞いているのです」と、富田先生は、凛とした声でさえぎった。
桧くんと甘沢さんもいる。桧くんは、そっと太一に近づき、
(お前がちゃんと言わねえからだろ。)と、小声で話し、暗に「違う」って言え、と応援してくれているようだった。
犯人扱いされることは、どうでもよかった。太一には、もうとっくに例の2人がしたことだとわかっていた。
でも、先生を傷つけた状態は、つらかった。
たとえ自分がした事でなくても、自分が関わっている限り、太一は、先生の花を駄目にしたのは、
自分のような気がしてならなかった。
それはここにいる全員に罵倒されるより、太一には、そのほうがずっとつらかったのだ。
「伊藤くん」と、富田先生は促した。先生の言葉に責める雰囲気はなく、むしろ太一を勇気づけているようであった。
もし太一が言わなければ、もちろん富田先生は自分が証人となって、事実を話すつもりであった。
でも、太一が自分で言うのを待った。
「俺の責任です。」
富田先生も、桧くんも、甘沢さんも驚いた目で太一を見た。
つづく