心の図書館(2)



(そうか、「人物」の区分もあるんだ。そこで、俺の本があれば、どういう風に思っている
かがわかる・・・)
俺は、自分の本を探してみることにした。
さすがに、両親の本はぶ厚い。何冊もある。
次に兄弟、親戚、飼っていたペットや、一度会って印象深かった人まである。
でも・・・。自分の本がなかった。いくら探してもない。
「あ、俺の本だ。」
向こうで、彼女と共通の友人の、男友達の声がした。
(あいつの本があって、何で俺のが無いんだろう・・・)
俺は、どきどきしながら、司書にたずねてみた。
「あの・・・〇〇〇〇という名前の本、ありますか。俺の名前なんですけど。」
変なたずね方だなと思ったが、司書はすぐにわかってくれて、奥から鍵を持ってきて、
「こちらへどうぞ。」と、案内してくれた。
(なんだ・・・別の場所にあったのか・・・。)
司書が奥のドアの鍵を開けると、ベージュの色合いの書斎に机があり、書きかけの
原稿があった。
「実は、まだ製作途中ですが、読むことはできます。」
製作途中だから、本棚になかったのだ。
俺は、その原稿を手にとって読もうとしたが、何か文章が象形文字のようで読めない。
「あの・・・なんて書いてあるか、読めないんですが。」
司書はちょっと哀しい顔になって、言った。
「今、仲違いされていたり、相手が読む人に対し、心で拒否する状態ですと、読むことができなくなります。」
俺は、膝に手を置いて下を向いた。
(そうか、いくら本があったって、心が開かれていなければ、
肝心なところはわからないんだ・・・)
そのとき、彼女の親友が来て、原稿を持ち、なんとなく状況を察すると、
「私、読めますよ。読みましょうか」と言ってきた。
「いや、俺が自分で読めるようになるまで、内容は知らなくていい。・・・俺は、仲直りするよ。」

その後、例の図書館から、俺の本ができましたという案内をもらったが、俺はもう、その図書館へは
いかなかった。
知ることより、大切なことがあるから。

                      おわり